思いの違う利用者本人(妻)と、
使命感を持って利用者を支えた
家族(夫)への グリーフケア

事例提供者:訪問看護ステーションひまわり 
田中 恵里さん
マンガ提供 二本柳 舞さん

【あらすじ】

ご主人と二人暮らしのAさん(がん末期、70歳代)は、「おいしい物を食べる為に病院から家に帰ってきた」と話し、身辺整理もされていました。Aさんは、痛みが強くなったら緩和病棟に入院することを決めていましたが、ご主人は治療を諦めきれず夫婦で口論になる時もしばしば。
現状を認めたくないというご主人の思いはどこにあったのか?ご夫婦のことが気になっていた訪問看護認定看護師の田中さんは、どんなサポートをされたのでしょうか。

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【認定さんポイント】
療養者の意思を尊重しながら、
家族の支援をし続けた訪問看護認定看護師

「私はここで独りです」奥様がお亡くなりになったあとにご主人が吐露したひと言。おそらくこれが全てで、だからこそご主人は、少しでも一緒にいたい一心で奥様の病状をつぶさに観察し、時に調べ上げ、田中さんにも相談をされていたと思われます。
ただ、時に奥様の意思に反して主観で判断してしまうところがあったため、それを埋めるべく、奥様の意向を代弁し、療養日誌を通して痛みを可視化して正しく薬が使えるように導いた田中さん。どうしたらお互いの思いが噛み合うようになるのかを考え、療養日誌を進めたところは、認定看護師ならではの発想だと思います。
そして奥様が亡くなった後、療養中のご主人の様子から察していた田中さんの提案でデスカンファレンスを行い、これを受けて一人になってしまったご主人に会い、グリーフケアをされました。
訪問看護師は必ずしも「最期は在宅で」とは考えていません。療養されるご本人が望むことを第一にサポートしています。そして、療養者ご本人が入院されても、そして亡くなっても看護を終わらせず、ご家族をサポートする見守る心は訪問看護の特徴とも言えます。
これまでの奥様へのサポートについて敬意を表してねぎらう様は、生前から変わらず一貫してご主人に寄り添う看護を提供されていました。
デスカンファレンスで、緩和ケア病棟も田中さんと同じ思いで奥様とご主人を支えていたことが分かったようです。在宅・病院と思いがつながった看護を提供できていたことを知り、感動した田中さんでした。

※グリーフケア:死別をはじめとする「喪失」を体験した人の悲しみや痛みに寄り添い、立ち直り、自立できるようケア・サポートすること
※デスカンファレンス:亡くなった利用者に関わった看護師をはじめとするスタッフが、利用者の死に至る経過や利用者・家族等に実施したケアもしくは、利用者・家族に対する思いについて振り返るカンファレンス