第2弾
10年連続新卒看護師採用&誰も辞めない訪問看護ステーションの魅力とは
大阪府住吉区

Q5 訪問看護師が辞める理由は、緊急当番の負担感が上位にあがっているのですが、皆さんはどうですか?

山下 「うちは直接利用者さんからかかってくるわけではなく、何かあったら利用者さんから受け持ちの看護師に電話があって、受け持ち看護師から当番に連絡が来る形です。利用者さんのことをわかっている看護師から電話が来るので不安はないですね」

 

中田 「最初は電話が鳴るたびにめちゃくちゃドキドキしていました。でも、だんだん経験を重ねると、電話を取った時の声のトーンで、これは緊急性が高いかもと予測できるようになってきたので、ドキドキしなくなりました。日中もかかってくるので、対応している先輩の様子をみて知らないうちに 覚えたんだと思います」

 

倉本 「私は 1 年目なので緊急対応はまだやらないですが、きっと自分が できるようになってからつけてくれるという信頼があります。」

緊急連絡体制一覧

利用者さん宅に貼られている一覧表。何かあれば、上から順に電話をかければOK!複数人の番号を伝え、1人の負担を減らす工夫をしています。

事業所の体制と先輩の声かけから、一般的に言われている負担感はあまりないことがわかりました。ハートフリーは若手看護師、ベテラン看護師、産後復帰された方、育休を取ったパパなど、いろんな人が一緒に過ごしていました。
インタビューの中で「職員同志の関係性って看護の質につながると思います」という言葉を聞きました。
いつでも相談できる関係の中で、困りごとは一人で抱えず・放っておかず、多様な価値観、看護観でその日のうちにフォローできる環境は、看護の質を高めることに直結しているのでしょう。
とにかく職員の皆さんはハートフリーが大好きなことが伝わりました!

1日中、あちらでも、こちらでも、相談・アドバイスする姿がありました

2.きっかけは学生実習 ~楽しさを伝える実習指導~

若手看護師の皆さんは学生時代の講義で初めて訪問看護の存在を知ったそうです。その後、訪問看護実習を経て就職したいと考えるようになったということは、実習が大きなポイントだったことが分かります。
さっそくインタビューしてみました。

Q1 訪問看護の実習はどうでしたか?率直な感想を聞かせてください

大藪「在宅は、利用者さんのお話をゆっくり伺えたという印象が強いです。病気や治療の前に、その人自身のことを知ることが大事だと経験できたのが良かったです」

西(実習先ハートフリー)「お家に訪問するのは楽しかったです。利用者さんだけでなく家族に対して、どんな声かけをして、どうやって表情を読み取るか看護師さんに教えてもらったのが印象に残っています」

大須賀(実習先ハートフリー)「病院だと医療者側主体だなと感じていましたが、訪問看護では、常に主語は利用者さんであり家族さんなんですよね。これぞまさに自分がしたい看護だと気が付けました」

山下(実習先ハートフリー)「こんな素敵な職場があるんだと衝撃的でした。まず看護師さんが怖くない(笑)。
あと、病院だとタバコは絶対にダメとか、薬を飲み忘れたら絶対にダメっていうところを、健康状態と本人の希望を合わせて、話し合って落としどころを見つけるとか、あえて本人さんに任せるところが印象的でした。とにかく訪問看護の実習が楽しかったんです」

中田(実習先ハートフリー)「よく「個別性の看護」と聞きますが、訪問の実習で始めて理解が深まった気がしました」

学生さんには、看護の楽しさを伝えることが大事(大橋)

Q2 実習の中で、訪問看護の魅力をそれぞれで感じ取っているようですね。
どのように短期間の実習でこんなにも訪問看護の魅力を伝えたられたのでしょうか。

宝積「指導マニュアルはないんですよ。実習担当者に伝えていることは『優しく丁寧に教える』と、『できる限り直接ケアをしてもらう』という2点だけです。実習担当者から相談があったらアドバイスはしますが、基本的に任せている感じです」

Q3 でも、マニュアルがない中で実習指導する職員が同じように訪問看護の魅力を伝えられるってすごいですね

宝積「『ここに実習来てよかった』と思ってもらえたらという思いだけですね。楽しく生き生きと訪問している姿を見てもらうのが1番だと思っています」

Q4 色々な場面を経験するために、たくさんの同行訪問をするのでしょうか

宝積「いえいえ、その逆です。1件1件の訪問を大事にして欲しいですし、たくさん訪問すると印象に残りづらいと思うので、午前1件、午後1件です。『利用者さんが今まで生きてきた歴史を大事にして、膝と膝をつき合わせてじっくりお話を聞いてください』と伝えています」

Q5 学生実習を経て新卒で就職した看護師は、今では実習担当者に成長されているとのことですが、経験を元にどんな指導をされているのでしょうか

大藪「自分がやっていて楽しいこと、ケアができて嬉しかったことを見つけて、やりがいを感じるのが良いと思っています。
あと、利用者さんの立場や利用者さん家族の立場を、自分と近い存在として考えたり話したりしてケアに関わると、良いケアができると思います」

大須賀「学生時代、実習で辛いことがあって辞めてしまった同級生がいました。だから、学生さんには看護の仕事を嫌いにならないで欲しいと思っています。看護師という仕事はすてきな仕事であり、訪問看護ってこんなに面白いよと伝えられるように心がけています」

山下「病気のことは先生が指導してくださるので、楽しく実習ができたらいいなと思って関わるようにしています」

中田「自分の看護を言語化して伝えるように心がけています。でもこれって意外と大変(笑)。教えてもらう立場だったのが、今は教える立場になったので、ぼんやりではなく、しっかりと言葉にして伝える努力をしています。あとは、できるだけケアに参加してもらいます。印象に残るし、利用者さんに『ありがとう』って言われると嬉しいですよね」

Q6 学生さんと一緒に訪問してみてどうですか?

大須賀「学生さんの姿を見ると初心に戻れます。あと、初対面の場合や事前情報が少ない場合には、こう感じるんだということは勉強になります。多職種に情報共有する時に気を付けるポイントだと思っています」

山下「学生さんに質問されて答えられないと、自分がちゃんとわかってないところなんだと気が付きますね」

訪問看護実習は、短期間でありながらも、その人自身に向き合うことの大切さやありのままのその人を看るという、まさに看護の原点を五感で感じとる生の経験と言えます。そして、実習を受け持つ若手看護師にとっても、自身の看護を振り返る良いきっかけになっているようです。
訪問看護の魅力を伝えるには、マニュアルは必要なかったのですね。看護師が生き生きと働き、相手の想いを共に感じる経験こそが、彼女彼らの人生をも動かす宝になったのでしょう。
それにしても皆さん、自分の想いやケアをしっかりと言語化できていることに関心させられます。ここハートフリーでは、毎朝のミーティングや記録でも、言語化して簡潔に伝えることに意識をおいているそうです。

3.何をおいても、職員が大事

新卒から立派な訪問看護師に成長された皆さんを見ていると、新人教育に興味がわきます。

Q1 新人教育はどのようにされているのでしょうか?

田端「ハートフリーは法人内に訪問看護ステーションの他、診療所とナーシングデイ(療養通所介護および児童発達支援事業所)が併設されているので、上手く活用して看護技術や処置方法について経験できる機会を作っています。
新卒1年目は、午前は診療所やナーシングデイ、午後は同行訪問を中心というように組合せています。診療所では採血や点滴、バルーン交換などの技術面の習得ができ、ナーシングデイでは主に小児の吸引や人工呼吸器について習得できます。訪問看護では訪問について全般ですが、多職種連携や家族看護という風にそれぞれに学べる環境があります。」

なるほど、併設施設がある強みを活かして幅広い経験がつめますね。

環境をフル活用して職員を育成する

Q2 でも、診療所で患者さんとダイレクトに接するので不安はないですか

西村「最初はドキドキしました。例えば採血では駆血帯の結び方や血管の探し方など、先輩が横に付いて、手取り足取り教えてもらえました。『失敗しても私がフォローするから』と声をかけてもらいながらできるので心強かったです」

倉本「もともと先端恐怖症があったんです。そのことを先輩に話したら『別にいいんじゃない』と言われて、『え、看護師なのにいいの?』と思いました。
診療所では自分のペースに合わせて指導してくださったので、今では注射も点滴も1人で大丈夫なんです。先輩方の包容力で克服できたと思っています」

先輩の言葉から安心感を得て、自分がダメだと思っていたことを克服できただなんて凄いエピソードですね!相手を受け入れ、できるように寄り添う先輩の包容力ってすごいです。
新人の看護師を診療所に出すのは、リスクを伴うことから、見学だけにしても良いはず。でもここでは「どんどんやってもらう」という文化。職員の持っている力を信じて育てる、という幹部の姿勢を感じました。

Q3 診療所の経験からなにか気が付くことはありましたか

大須賀「受診に来るのは地域の方ばかりで、毎日血圧を測りに来たり、吸入に来たりと、どんどん顔馴染みになるのが新鮮です。毎日顔を合わせていたら、この人はあそこの角に住んでいて、元々八百屋さんだったとわかってくるんです。
例えばその方が訪問看護を利用されていると、環境をフル活用して職員を育成する外来で見聞きしたことと訪問して気が付いたことが繋がるんですよ。その人の生活や地域での物語が自然と繋がって、地域に密着している部分が面白いです」

Q4 1年目は、道を覚えたり、医療処置を覚えるだけでもいっぱいになると思います。それに加えて、生活や地域という観点での気づきが得られるって、なかなかないと思いますがいかがですか?

大須賀「そこは他とは違うと思います。病気が先ではなく、人が先に来る感じがありますね」

大橋「ここは地域の人にも新人を育ててもらってますよ。
『この子は今年から入った看護師なので、皆さんで育ててやってください』と外来で紹介してます」

田端「利用者さんも、本当にみんなを育てくれるので有難いです。名前もしっかり憶えてくれて、私が知らない家族の事や趣味まで知ってくれている事もあります。
私の方が教えてもらう事もあるほどです(笑)また、最初はうまくいかなかった点滴など、『上手にできるようになったで~』とか成長を教えてもらえるのも嬉しいです」

学生さんが描いてくれた注意事項を嬉しそうに見せてくれた藤田さん

田端さんと地域を巡っていると、手をあげて満面の笑顔で挨拶をしてくれる地域の方々に何人も逢いました。
いち事業所がこんなにも地域に密着しているなんて、看護の目が地域の隅々にまで行き届いていることが伝わる場面でした。