一人暮らしの癌末期を
支えるために、
私が行ったこと

聖霊病院訪問看護ステーション 
恒川 由里さん
マンガ提供 二本柳 舞さん

【あらすじ】

元料理人の七瀬さん(一人暮らしの50歳代男性)は、強い腹痛により救急搬送され、検査の結果胃癌が見つかりました。治療しても直る見込みが無いならと、治療を拒否。翌日退院してしまいました。そんな七瀬さんの生活を支えるために、訪問看護が始まりました。家族や知人とも疎遠な七瀬さんは口数が少なく、口下手なところがあり、ヘルパーや訪問看護師とのコミュニケーションも上手く行きません。次第に体力が落ち、歩行が出来なくなりましたが、会いたい人も連絡取りたい人もおらず、かたくなに心を閉ざしていました。でも、少しずつ自分がしたいことを伝えてくれるようになりました。そしてある時、突然、亡き父親のお墓参りに行きたいと希望されます。
今を生きる七瀬さんの希望をかなえようとする恒川さんの思いとは?
どんなことを思い、何を大事にしようと思ってケアをされたのでしょうか?

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【認定さんポイント】
心を閉ざす七瀬さんの本来の姿を蘇らせたのは、
喜怒哀楽すべての感情を受け止め、
寄り添う姿勢を貫く覚悟をもったケア

恒川さんの認定ポイントは七瀬さんの本来の姿はどうだったんだろうと関心を寄せたことだったと思います。これまでの暮らしぶりを想像し、その生活を少しでも取り戻すことで七瀬さんらしさを引き出し、最期の日々を過ごして欲しかった恒川さん。そこをひたすら追い求めた結果、外出の希望をかなえることができ、日々の訪問の中で食事を作り、それを住み慣れたこの部屋で食べてもらうことで、本来の七瀬さんの姿になりました。
通常、訪問看護では食事の準備は行いません。それでも恒川さんは、残された時間を七瀬さんにとってより良い時間として過ごしていただくためにどうしたら良いかアセスメントし、それが食事の準備であるならば、それが七瀬さんへの看護であるとスタッフに言語化して伝えていました。
一人で過ごすことを選んだ七瀬さん。しかし、訪問看護師やヘルパーなど、色んな人が出入りする様は七瀬さんにとって日常ではありません。人に物を頼むこともきっとなかったであろうこれまでの人生。最後に恒川さんに願い事を伝えられたのは、死に直面している七瀬さんの喜怒哀楽すべての感情を受け止め、最後まで寄り添う姿勢を貫いた恒川さんだからこその信頼関係と言えます。
ぶっきら棒で口下手だけれども、穏やかな気持ちでお食事をしている姿が目に浮かびます。